記帳代行を積極的に請けない理由

記帳代行を積極的に請けない理由 事務所運営

税理士事務所の業務の一つに記帳代行があります。

少し前まではクラウド会計の発展とITの進化により記帳代行はなくなると言われていましたが、深刻な人手不足の影響もあり、なくなるどころか記帳代行のニーズは高まっています。

多くの税理士事務所が記帳代行を主力サービスとして提供しています。

そんな中でも、私は記帳代行を積極的には請けない方針をとっています。

記帳代行を請けない3つの理由

1.経営支援業務に注力する

記帳業務は、過去の取引を正確に記録し、現状を把握するために重要な業務です。

しかし、私はその先の未来に向けた戦略を一緒に考える時間に注力したいと考えています。

うちでは、経営支援業務に力を入れており、具体的には、経営計画の作成、その進捗管理、具体的なアクションプランへの落とし込み、資金繰り管理などをおこなっています。

記帳代行を請けると事務所のリソースが記帳代行業務に大きく割かれてしまいます。

過去の数字を分析し、そこから得られる示唆を元に、経営者と「これからどういうふうに経営の舵取りを行っていくか」を共に考え、実行に移す時間に、事務所のリソースを最大限に割きたいと考えています。

2.記帳業務の負担が軽減している

IT技術が進化により会計ソフトも年々使いやすく進化しています。

専門知識がない方でも会計ソフトの使い方や記帳のルールを学べば、ご自身で十分に記帳業務を行うことが可能です。

会計ソフトによっては銀行口座やクレジットカードとの連携が可能で、仕訳の大部分が自動で入力されるといったこともできるようになっています。

手間をかけずに記帳を行うことができる環境が整っているのに「よくわからないから税理士事務所に丸投げしよう」というのはもったいないと考えています。

記帳代行の代わりに、「記帳指導」や「業務効率化の提案」に力をいれています。

お預かりした帳簿を確認し、誤っている箇所があれば訂正し、その理由をご理解いただけるよう丁寧に説明します。また、日々の記帳業務の負担を最小限に抑えるための効率的な方法を、お客様に合わせてご提案しています。

3.自社の数字を「他人任せ」にしない

記帳代行は、税理士事務所にとっては日常業務ですが、経営者にとっては自社の数字を把握する絶好の機会です。

特に創業したばかりの時期は、経営者自身が数字に向き合うことで、「今月は支払いが多かったからキャッシュが減っているな」「この売上は、あの戦略が効いたんだな」といった、リアルな経営状況を肌で感じることができます。

この肌感覚こそが、経営判断の質とスピードを向上させる源泉となります。

記帳代行を請けるケース

記帳代行を「積極的には請けない」というスタンスですが、「絶対に請けない」というわけではありません。

原則としては「自計化(ご自身で記帳すること)」をおすすめし、そのための支援も徹底的に行います。

しかし、例えば、事業を本当にお一人でされている方で、記帳業務にまで手が回らない、というような場合は、経営支援の前提として記帳支援が必要となりますので、個別にご相談の上、お引き受けすることはあります。

現状、記帳代行をお引き受けしているのは個人事業主の方が中心で、法人のお客様にはほぼ100%自計化していただいています。

まとめ

私は決して記帳代行を否定しているわけではありません。

経理業務が苦手な方が本業に集中するため、記帳代行を専門家に依頼するのは、大いに「あり」だと思っています。慢性的な人手不足の時代だからこそ、経理業務をアウトソーシングすることのメリットは非常に大きいでしょう。自社で経理を雇用するよりも、記帳代行を依頼する方が費用対効果が良いというケースも確かに存在します。

そういった場合は、迷わず記帳代行を依頼されるのが賢明です。

ただ、私は、記帳代行よりも、お客様と「未来」について話す時間のほうが楽しく、そこでお客様に貢献したい。

どうすれば会社がもっと成長できるのか、次の目標は何を設定すべきか、そのために今何をすべきか、そういった時間に注力していきたいと考えています。

この記事を書いた人

広島市中区白島で税理士をしています。30代の開業税理士です。「税理士という枠を超えてお客様の一番の相談役となる」ことを目指しています。
税金や経営に関する情報、日々考えていることを発信していきます。

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