インボイス制度 旅費交通費の精算に必要なインボイスまとめ

旅費交通費の精算まとめ 消費税

事業者は、日々、交通費や出張旅費の精算、通勤費の支給など旅費交通費に関連した取引を行っています。インボイス制度では、旅費交通費について仕入税額控除を行うためには原則としてインボイスが必要となります。

しかし、帳簿のみの保存により仕入税額控除が認めらえる公共交通機関特例(3万円未満の公共交通機関による旅客の運送はインボイス不要)や、出張旅費等特例(従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等についてはインボイス不要)もあり、仕入税額控除を受けるために、どういった場面で、どのような書類の保存が必要となるかが現行の区分記載請求書等保存方式よりもわかりづらくなっています。

そこで、旅費交通費の精算方法についてまとめてみます。

立替えた旅費の精算or出張旅費等の支給

旅費交通費の精算は、大きく分けて次の2パターンに大別されます。

①従業員が立替えた旅費を精算する。

②出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当など)を支給する。

①と②の大きな違いは、取引の相手先です。

①の従業員が立替えた旅費を精算する場合、取引の相手先となるのは公共交通機関やタクシー会社など旅費の支払先が取引の相手先となります。

対して、②の出張旅費等の支給は、通常、旅費規定等に基づいて従業員に支給されます。
従業員は、自己の判断で支給を受けた出張旅費をホテル代や交通費に充てるため、出張でかかった費用が必ずしも支給した出張旅費と一致するわけではありません。

つまり、取引の相手先は旅費の支払先ではなく出張旅費を支給する従業員となります。

立替えた旅費の精算

従業員が旅費交通費の立替え払いを行った場合、仕入税額控除を行うためには、原則として事業者宛のインボイスが必要となります。

もし、インボイスの宛先が事業者ではなく、従業員となっている場合は、そのインボイスが従業員ではなく事業者のものであることを明らかにするため、従業員が作成した立替金精算書を保存しておく必要があります。

つまり、従業員宛のインボイス+立替金精算書によりインボイスの保存要件を満たすこととなります。

さらに、インボイスが入手できない場合であっても、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送については、特例として帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められています(公共交通機関特例)。
この公共交通機関特例を適用するためには、帳簿に公共交通機関特例の対象である旨を記載する必要があるため注意が必要です。

また、飛行機の航空券は公共交通機関特例の対象外であるため、航空券について仕入税額控除を行うためには必ずインボイスの保存が必要となります。

参考:インボイス制度 飛行機の航空券は公共交通機関特例の対象外 

出張旅費等の支給

従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊旅費、日当、通勤手当)については、帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められています(出張旅費等特例)。

この出張旅費等特例も公共交通機関特例と同様に、適用するためには帳簿に出張旅費等特例の対象である旨を記載する必要があります。

この出張旅費等特例には、金額基準がないため、「通常必要と認められる部分」の金額であればいくらであってもインボイスの保存は不要となります。

ちなみに「通常必要と認められる部分」の金額は、所得税基本通達9-3非課税とされる旅費の範囲 に基づき判定されます。

法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。

(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。

(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

引用元 所得税基本通達9-3

また、税務通信NO3697号によると、出張旅費等特例については、一律支給ではなく、その支給が実費相当額であったとしても、旅費規定等に基づいて事業者が従業員に出張旅費を支給しているのであれば、出張旅費等特例を適用することができるようです。

出張旅費等特例は、金額基準がなく、実費相当額でも適用できるとあれば、旅費交通費の精算はすべて出張旅費等特例の対象としてしまおうと考えてしまいますが、そういうわけにはいきません。

出張旅費等として従業員に非課税所得で支給し、さらインボイスを保存しなくても仕入税額控除を行うことができるとなると、税務調査の際には出張旅費の支給について説明ができるよう、旅費規定等の社内ルールを整備し、支給の根拠を明確にしておくことが重要です。

まとめ

インボイス制度における旅費交通費の精算については、まず ①従業員が立替えた旅費を精算するのか、②出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当など)を支給するのかを見極めることが重要です。

①であれば、仕入税額控除のため、原則としてインボイスの保存が必要となり、特例として3万円未満の公共交通機関の運賃の支払いについては公共交通機関特例を適用することができます。

②であれば、従業員に支給する通常必要と認められる出張旅費等については出張旅費等特例を適用することができます。

自社の旅費交通費の精算について、インボイスを入手することができるか、立替金精算書の保存は必要か、公共交通機関特例、出張旅費等特例の適用はできるか、確認しておきましょう。

(参考)
インボイス制度 出張旅費特例は業務委託先への支払でも使えるのか? はこちら

インボイス制度 入場券等回収特例の使いどころ はこちら

インボイス制度 自動販売機特例の適用範囲と要件 はこちら

   

この記事を書いた人

広島市中区白島で税理士をしています。30代の開業税理士です。「税理士という枠を超えてお客様の一番の相談役となる」ことを目指しています。
税金や経営に関する情報、日々考えていることを発信していきます。

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