以前生成AIの進化についての記事を書きましたが、あれから1年が経ち、生成AIの進化は想像を超えるスピードで加速しています。
その波は税理士業界にも押し寄せており、多くの税理士事務所がAI活用の研究を進めています。
AI活用の最前線を追いかけるのはなかなか大変ですが、私が業務に取り入れているAI活用とその効果についてご紹介します。
文書作成の自動化・効率化
生成AIを利用して最も業務効率化の影響が大きいのは文書作成です。
税理士業務では文書を作成する場面が多くあります。顧問先から依頼される規程や契約書の作成、日々発生するメール返信など多岐に渡ります。
規程や契約書の作成は、これまで過去のフォーマットを再利用したり、専門サイトのひな形を加工したり、ネットで調べながら作成したりしていました。
生成AIを利用してからはこの作業が劇的に変わりました。
現在は、生成AIに頼めばあっという間にひな形が出来上がります。生成AIが作成したひな形に不足事項やクライアントごとに必要な文言を加えていけば完成です。
生成AIで作成する規定や契約書は完璧ではありませんが、ゼロから作るよりも大幅に時間を短縮できます。この「叩き台」があるかないかで、業務効率は大きく変わります。
地味に時間がかかるのがメールのやり取りです。
特に、まだ関係が構築されていない新規のお問い合わせや、お食事のお礼、複雑な日程調整のメールなど、「失礼があってはならない」というプレッシャーから、言葉選びに時間がかかりがちです。
そんな時は、状況を伝えて「丁寧なビジネスメールの文面を考えて」と指示すれば、私が一から考えるよりも、よほど洗練された適切な文面を作成してくれます。
ビジネス用の固い文書の作成は、もはやAIの得意分野と言えます。
AIボイスレコーダーで議事録作成
顧問先との打ち合わせ後、事務所内での情報共有や次回の打ち合わせの備忘録として、議事録を残すようにしています。これまでは、打ち合わせ時のメモと記憶を頼りに10~20分ほどかけて議事録を作成していました。
しかし、「PLAUD NOTE(プラウドノート)」というAIボイスレコーダーを使うようになってその時間が大幅に短縮されました。
このツールの優れている点は、録音したデータの文字おこしと要約を行ってくれるところです。
AIが音声を分析し、精度の高い要約を自動で生成してくれます。
打ち合わせの際にPLAUD NOTEを起動して、打ち合わせ後に文字おこし&要約を行えば、自分で作成するよりも立派な議事録が完成します。
利用して感じたのは、自分の記憶以上に顧問先と話した内容には情報量が多いということです。
自分のメモと記憶で作成した議事録は、どうしても自分が「必要」と感じた情報しか記録されません。無意識のうちに、記憶に残すために「不要」と感じた情報は覚えないようにしていたのでしょう。
PLAUD NOTEを利用するようになって、業務効率化と同時に、顧問先に関する情報がこれまで以上に深く、正確に蓄積されるようになりました。
相談対応はAIで「抜け漏れチェック」
生成AIは顧問先からの相談対応にも活用しています。
私の場合は「分からないことを聞く」というよりは、「自分の答えに抜けがないかの確認」に利用することが多いです。
例えば、顧問先に「法人成りのメリット・デメリットを教えてください。」と相談されたとします。「所得が大きい場合は節税になる」「社会的信用が増す」「社会保険料の負担が大きい」などすぐにいくつか回答が浮かびます。
しかし、もしかするとその場で思い浮かばないメリットやデメリットがあるかもしれません。
これまではネットや書籍で調べてから回答していましたが、生成AIを利用すると質問に対する回答を瞬時に羅列してくれます。これにより、調べる時間を大幅に短縮でき、顧問先により早く、そして網羅的に回答することができるようになりました。
もちろん、生成AIが出してきた回答がすべて正しいとは限りません。
税理士として、その真偽を見抜く知識と経験は引き続き不可欠です。しかし、思考の壁打ち相手やチェックリストとして活用することで、相談対応の質とスピードを両立できるようになりました。
まとめ
私がAI活用を進める中で意識していることは、とにかく「良いと聞いたものは触れてみること」です。触ってみないことには、良いか悪いか、自分の業務に活用できるかの判断ができません。
AIを利用したサービスは次から次へ出てきており、正直なところ、すべてを追うことは不可能です。
だからこそ、良いと聞いたものはまず利用してみる。自分には難しそうなら深追いせず、次のツールを試す。この繰り返しです。
ここ数年のAIの進歩の速さ、税理士業界の変遷を見ていると、AI活用の情報収集、利用、研究を怠ると一気に時代の流れに置いて行かれるという危機感を感じています。
AIを積極的に利用して定型業務を効率化することで、出来た時間を専門性の高いコンサルティング業務や、顧問先とじっくり向き合う時間に充てられるようになります。
AIの活用は、結果として顧問先へのサービス品質の向上、満足度の上昇につながると感じていますので今後も積極的に活用を進めていきます。