2024年7月ごろを目途に新紙幣が発行となります。
前回、紙幣のデザインが変わったのが2004年ですから約20 年ぶりの変更です。
見慣れた福沢諭吉、樋口一葉、野口英世が見れなくなると思うと寂しい気持ちもします。
新しい紙幣は子供や高齢者、外国人、目の不自由化な方などにも読みやすいように数字のフォントを大きく記載したデザイン(「ユニバーサルデザイン」というそうです)となるため見慣れるまでは違和感があるかもしれません。
個人的にはこれまでの漢数字のデザインの方が日本らしく、洗練されていたように思いますが、グローバル化、高齢化社会に向けた世界的な流れと言われれば納得です。
新紙幣の発行となればシステム改修が必要となる事業者も多く生じます。
両替機やレジ、自動販売機などが最たる例です。
新紙幣になっても使えるように改修が必要です。
新紙幣の発行に伴うシステム改修によって改修費が生じた場合、改修費は修繕費に該当するのでしょうか?
それとも資本的支出として資産計上が必要となるのでしょうか?
原則、修繕費に該当
結論から言いますと、新紙幣の発行に伴うシステム改修費は原則的には修繕費に該当します。
修繕費に該当する理由
修繕費と資本的支出では、次のような性質の違いがあります。
固定資産の通常の維持管理、原状回復⇒修繕費
固定資産の価値を高める、耐久性が増す⇒資本的支出
新紙幣の発行に伴うシステム改修は、既存の紙幣だけでなく新紙幣でもシステムを利用できるようにするための改修であり、従来の機能を維持するために行われるものです。
新たな機能の追加、機能の向上等には該当しないため、修繕費に該当します。
当然ながら新紙幣に対応するためのシステム改修に加えて、利便性の向上のため新たな機能を追加するための改修を行った場合は、機能追加分については資本的支出に該当し、固定資産に計上する必要があります。
最近では、同様の事例として国税庁から「消費税のインボイス制度の実施に伴うシステム改修費用の取扱いについて」が公表されています。
国税庁の見解として、
「インボイス制度の実施に伴い、システムに従来備わっていた機能の効用を維持するために必要な修正を行うものであることが作業指図書等から明確である場合には、新たな機能の追加、機能の向上等に該当せず、これらの修正に要する費用は修繕費として取り扱われる」とのことです。
新紙幣の発行に伴う改修費も同様に、従来の機能を維持するための改修であることが作業指示書等で明確にされていれば修繕費として取り扱われます。
まとめ
新紙幣の発行に伴うシステム改修費は、原則的には修繕費で計上できます。
機能を維持するための改修とは別に、新たな機能の追加、機能の向上のための改修も同時に行うのであれば機能追加等の部分については資本的支出に該当する可能性があるため、機能維持のための改修費と、機能追加等のための改修費の請求は分けてもらうようにしましょう。
システム改修費は多額になることも想定されます。
多額のシステム改修費が修繕費に計上されることで、収支の見込みが大幅に変わってしまう恐れがあります。
早めに見積もりを取り、収支予測に組み込むなどの対策を行いましょう。
20年ぶりの新紙幣の発行に向けて万全の準備を行いたいところです。