事業者の多くは支払いの際に銀行振込みを利用しています。
振込み方法は窓口やATM、インターネットバンキングの利用など様々です。
インボイス制度では仕入税額控除を行うためには原則としてインボイスの保存が必要となります。
銀行振込みの際にかかった振込手数料について仕入税額控除を行うためには、どのような書類をインボイスとして保存しておく必要があるのでしょうか?
窓口での振込みの場合
銀行窓口での振込みの場合、振込手数料について仕入税額控除を行うためには、インボイスの保存が必要となります。
窓口でインボイスの要件を満たした領収書や受取書が交付されるため保存しておきましょう。
ATMでの振込の場合
ATMでの振込みの場合、インボイスの保存は不要で一定の事項を記載した帳簿の保存により仕入税額控除を行うことができます。
これは、ATMでのインボイスの交付が困難であることから、インボイスの交付義務が免除されているためです。
「自動販売機特例」と呼ばれるもので、3万円未満の自動販売機や自動サービス機からの商品の購入等については、インボイスの交付義務が免除されおり、該当する取引については、インボイスの保存が不要で、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けることができます。
ATMでかかる振込手数料が3万円を超えることは考えにくいため、ATMでの振込手数料は自動販売機特例の対象となります。
自動販売機特例を適用するためには、帳簿に通常必要な記載事項に加えて、
①自動販売機特例に該当する旨
②仕入れの相手方の住所又は所在地
を記載する必要があります。
(記載例)
振込手数料(自動販売機特例、××銀行□□支店ATM)
(参考)インボイス制度 自動販売機特例の適用範囲と要件 はこちら
インターネットバンキングでの振込の場合
インターネットバンキングでの振込みは、自動販売機特例の対象外であるため、振込手数料について仕入税額控除を行うためには、インボイスの保存が必要となります。
自動販売機特例は、機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結するものが対象となります。
インターネットバンキングは、機械装置で資産の譲渡等が行われないため特例の対象外となっています。
インボイスの交付方法としては、各銀行のシステムより電子インボイスを交付することが考えられます。
交付された電子インボイスをダウンロードまたはコピー等して保存しておきましょう。
少額特例(少額取引に係るインボイスの保存不要制度)
窓口やインターネットバンキングの振込みの際に発生した振込手数料について、仕入税額控除を行うためにはインボイスの保存が必要となります。
しかし、一定規模以下の事業者には、少額(税込1万円未満)の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも帳簿の保存のみで仕入税額控除ができる「少額特例」と呼ばれる制度があります。
この特例の適用対象者は、基準期間(個人事業者についてはその年の前々年、法人についてはその事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1億円以下又は特定期間(個人事業者についてはその年の前年1月1日から6月30日までの期間、法人についてはその事業年度の前事業年度開始の日以後6月の期間)における課税売上高が5千万円以下の事業者が、適用対象者となります。
適用できる期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの6年間です。
この少額特例が適用できる事業者は、適用期間中は振込手数料についてインボイスの保存がなくても仕入税額控除を行うことができます。
(参考)インボイス制度 税込1万円未満の取引についてインボイスの保存が不要となる少額特例とは? はこちら
まとめ
銀行振込みの際に支払う振込手数料は、窓口・インターネットバンキングでは原則、インボイスの保存が必要となります。また、ATMでの振込みは、インボイスの保存は不要ですが一定の事項を記載した帳簿の保存が必要です。
インボイスの交付方法は、銀行によってその対応が異なります。特にインターネットバンキングでのインボイスの交付方法については各銀行に交付方法を確認するようにしましょう。
振込手数料は、1回の金額は少額ですが、件数が多く毎月のように取引が生じます。事務負担を軽減できるようインボイスの対応を整理、検討しておきましょう。