インボイス制度 入場券等回収特例の使いどころがわからない

インボイス 入場券等回収特例 消費税

インボイス制度に、入場券等回収特例と呼ばれるものがあります。
この特例は、対象となる取引についてはインボイスの保存がなくても、帳簿に一定の事項を記載することで帳簿のみの保存で仕入税額控除を認めるというものです。
この特例、意外と使える場面は少ないかもしれません。

入場券等回収特例とは

国税庁が公表するQ&Aでは、入場券等回収特例について次にように説明しています。

適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(公共交通機関特例の対象を除く)

消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&Aより

インボイスとなる入場券等が回収されてしまい手元にインボイスが残らないのであれば、帳簿の保存だけで仕入税額控除を認めるという趣旨です。

この説明を聞いて具体的にどういった取引が入場券等回収特例の対象として思い浮かぶでしょうか?

私が真っ先に思い浮かんだのは、公共交通機関の乗車券です。
改札で乗車券が回収されますので手元に残らない。
この特例の趣旨と一致しています。
また、国税庁Q&Aの説明を見返すと、カッコ書きで「公共交通機関特例の対象を除く」とあることから、公共交通機関特例の対象外となる3万円以上の公共交通機関の乗車券などを対象として考えているものと推測します。

また、スポーツ観戦やライブ、映画のチケットも入り口で半券が回収されるので対象となる気がします。(最近は入口でQRコードを読み取る電子チケットが多いかもしれませんが)

しかし実際は、公共交通機関の乗車券はほぼ特例の対象外スポーツ観戦等のチケットも多くは対象外になるものと思われます。

新幹線の乗車券は入場券等回収特例の対象外

入場券等回収特例の説明を再度確認すると「適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引」とあります。

つまり、インボイスに該当する入場券等が回収される場合に限りこの特例が適用できます

JR各社によると新幹線等の乗車券や特急券には、登録番号などのインボイスの記載事項は記載されないようです。

そのため、改札で乗車券等が回収されたとしてもインボイスに該当する乗車券等が回収されたわけではないため、入場券等回収特例の対象外となります。

JR以外のバスや船舶などの乗車券でインボイスに該当し、かつ、回収されて手元に残らないものがどこまであるかは定かではありませんが、乗車券等で入場券等回収特例の対象となるものは少ないものと思われます。

スポーツ観戦、ライブ、映画等のチケットの場合は?

スポーツ観戦等のチケットが入場券等回収特例の対象となるかも検討してみます。

チケットは、回収されたとしても半券を回収されることがほとんどでチケット本体が回収されることはありません。
チケットをすべて回収されると自分の座席がわからなくなります。
一般的に日付や料金など重要なことが記載されるのはチケット本体であり、回収される半券ではありません。

よって、回収されたチケットの半券がインボイスに該当する可能性は極めて低いと思われます。


また、QRコードを利用した電子チケットが普及してきており、チケットが回収されるということも今後は少なくなるでしょう。

チケットをインターネットサイトやコンビニ等で購入した場合、領収書を発行してもらえます。

そのため、各社の対応にもよりますがチケット自体をインボイスとするのではなく、領収書をインボイスとして取り扱うようになるものと思われます。

そのため、入場チケットではなく、購入時の領収書を大切に保管しておきましょう。

使える場面は限定的

私の想像力では入場券等回収特例が使える取引が現状ではイメージできません。

この特例はインボイスが回収されてしまい手元に残らないのであれば帳簿の保存だけで仕入税額控除を認めてくれるありがたい制度ではあります。

しかし、JRの乗車券で適用できないとなると使える場面は限定的ではないでしょうか。

(参考)

インボイス制度 公共交通機関特例の対象外となる飛行機の航空券の取り扱いについてはこちら

インボイス制度 旅費交通費の精算まとめについてはこちら

インボイス制度 自動販売機特例の適用範囲と要件についてはこちら

この記事を書いた人

広島市中区白島で税理士をしています。30代の開業税理士です。「税理士という枠を超えてお客様の一番の相談役となる」ことを目指しています。
税金や経営に関する情報、日々考えていることを発信していきます。

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