インボイス制度 宛名が従業員の簡易インボイス、従業員名簿があれば立替金精算書は不要

簡易インボイス 従業員名簿があれば 立替金精算書は不要 税金

宛名不要の簡易インボイスですが、宛名に従業員名が記載されている場合、法人は立替金精算書の保存が必要となるか疑問が生じます。

この度、国税庁が新たに公表したQ&Aにより従業員名簿の保存があれば立替金精算書はなくてもよいことが示されました。

簡易インボイスの宛名

簡易インボイスではなく通常のインボイスの場合、従業員が経費を立替払いした際に受領したインボイスの宛名が従業員名となっていると、法人は立替金精算書を作成し保存する必要があります。

なぜなら、法人宛てでないインボイスは「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」が記載されていないためです。

そこで、宛名が従業員ではありますが、実際に経費を負担したのは法人であることを明らかにするために、法人名が記載された立替金精算書を作成し保存しておく必要があります。

一方で、簡易インボイスは、文字通り通常のインボイスに比べて記載事項が簡易なものとされており、通常のインボイスでは必須となる「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」の記載が必要ありません。

そのため、従業員との経費精算で宛名がない簡易インボイスを受領した場合には、立替金精算書の作成・保存は必要ありません。

では、宛名に従業員名が記載されている簡易インボイスを受領した場合は立替金精算書が必要となるのでしょうか?

(下図は立替金精算書のイメージ図)

従業員名簿があれば立替金精算書は不要

国税庁が公表した「多く寄せられるご質問(令和5年11月13日更新)」の問⑩に「従業員が立替払いをした際に受領した適格簡易請求書での仕入税額控除」についての問いが記載されています。

問⑩ 当社は、事業に必要な消耗品等を従業員が自ら購入し、その際受領した適格簡易請求書と引き換えに、当該消耗品費を支払っています。この場合、当該適格簡易請求書の宛名には「従業員名」が記載されているのですが、これをそのまま保存することで、当社は仕入税額控除を行ってもよいでしょうか。

国税庁 多く寄せられるご質問(令和5年11月13日更新)より

この問いに対して、国税庁は次のように回答しています。

しかしながら、当該従業員が貴社に所属していることが明らかとなる名簿や当該名簿の記載事項に係る電磁的記録(以下「従業員名簿等」といいます。)の保存が併せて行われているのであれば、宛名に従業員名が記載された適格簡易請求書と、当該従業員名簿等の保存をもって、貴社は当該消耗品費に係る請求書等の保存要件を満たすこととして、仕入税額控除を行うこととして差し支えありません。
なお、従業員名簿等がなく、立替払を行う者である従業員を特定できない場合には、宛名に従業員名が記載された適格簡易請求書と、従業員が作成した立替金精算書の交付を受け、その保存が必要となります。

国税庁 多く寄せられるご質問(令和5年11月13日更新)より

つまり、従業員名簿等により自社の従業員であることを特定できれば、立替金精算書の交付を受ける必要はないということです。

そもそも宛名が記載不要の簡易インボイスであるため、宛名が従業員名となっていたとしてもその従業員が法人に所属していることを従業員名簿等で明らかにできるのであれば、立替金精算書の作成までは求めないということのようです。

電磁的記録の保存でもよいとされていますので、従業員名簿等を毎度出力しておく必要はありません。
従業員名簿等のデータを保存しておくのでもOKです。

ご注意いただきたいのは、従業員名簿等の保存があれば立替金精算書の作成・保存が不要となるのは簡易インボイスだけであって、通常のインボイスでは認められていません

通常のインボイスでもこの対応を認めてくれれば随分と現場は助かるのですが、国税庁からは今のところ認める旨の通達は出ていません。

通常のインボイスも同様の対応にしてほしいものです。

実務における対応方法

準備する従業員名簿等の注意点としては、在職者だけでなく退職者の名前も名簿に載せるようにしましょう。

名簿から退職者の名前を削除してしまうと経費精算の際に法人に所属していたことが把握できなくなります。
事業年度ごとに退職者も含めた従業員名簿を作成し保存しておきましょう。

ですが、
一番手間がかからない方法は、簡易インボイスを従業員の宛名で受領してこないことです。

従業員の宛名で受領するとひと手間かかります。
簡易インボイスは宛名なしで受領する。
宛名を入れる場合は法人名にしてもらう。

これを従業員に周知して徹底しましょう。

(参考)

インボイス制度 簡易インボイスを交付できる事業は?

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