クレジットカード決済のタクシーチケットの利用について、インボイスの保存がなくても要件を満たせば仕入税額控除を行うことができる取扱いが示されました。
タクシーチケットのインボイス回収は困難
タクシーを利用した場合、その利用料金について消費税の仕入税額控除を行うためには原則としてタクシー利用時に交付される簡易インボイスの保存が必要となります。
これは、支払の際にタクシーチケットを利用した場合も同様です。
タクシーを利用した者が自社の役員や従業員であれば、事前に「タクシーを利用した際には必ずインボイスをもらっておいてください」と注意喚起しておけば、容易に簡易インボイスを入手することができるでしょう。
しかし、接待などで取引先にタクシーチケットを渡した場合、タクシーチケットを利用した取引先から簡易インボイスを回収することは困難です。
取引先に対して「先日のお食事会の際にタクシーチケットをお渡ししましたが、仕入税額控除を適用したいので、簡易インボイスを回収させていただけますか?」とはとても言えません。
そのため、簡易インボイスを保存できないのであれば、仕入税額控除を適用できないのではないかという疑問がありました。
国税庁より対応方法が示される
国税庁はインボイスの「多く寄せられるご質問」の問25に、クレジットカードにより決済されるタクシーチケットのインボイス対応について、取り扱いを示しました。
取引先に渡したタクシーチケットにかかる簡易インボイスの保存が困難である事情を踏まえて、次の①②を満たせば、帳簿のみの保存により仕入税額控除の適用を行っても良いことが示されました。
①クレジットカード利用明細書
②タクシー事業者のホームページやクレジットカード会社のホームページ等に記載されている利用可能タクシー一覧の記載内容等に基づき、タクシーチケットで利用されたタクシー事業者がインボイス発行事業者であることが確認できること
つまり、クレジットカード利用明細で支払いが確認でき、かつ、利用したタクシー事業者がインボイス発行事業者であることが確認できれば、インボイスの保存がなくても、帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることができます。
この取り扱いは、タクシーチケットの利用を入場券等回収特例の対象と判断したためのようです。
<入場券等回収特例の説明>
適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(公共交通機関特例の対象を除く)
消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&Aより
個人的な意見としては、タクシーチケットの利用を入場券等回収特例の対象とするのはこじつけのような気がしています(入場券等ではないですし、簡易インボイスが回収されているわけでもない)が、帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることができるのは、事業者としてはメリットとなるため、ありがたく利用させてもらいましょう。
このタクシーチケットの取り扱いは、令和5年10月のインボイス開始時期に遡って適用することができますので、決算をまだ終えていない事業者の方は、過去の会計処理も見直してみましょう。
(参考)