AIの進化は確実に税理士業務に影響を与えています。
特にここ数年のAIの進化はすさまじいものがあります。
AIにより働き方が大きく変わった
以前から、AIの進化は税理士業務に影響を与えるであろうといわれてきました。
2014年のオックスフォード大学の教授の論文では10年後にAIに仕事を奪われる職業に会計士・税理士が堂々のランクインを果たしたというのは有名な話です。
論文から10年が経ちましたが、現状では仕事はなくなっていません。
しかし、確実に働き方は変わってきています。
特に記帳業務についてはかなりAIによる改善が進んでいます。
会計ソフトによっては、銀行、クレジットカード、電子マネーなどと連携することで入出金の明細を自動で取得し、仕訳まで作成してくれます。
仕訳に誤りがあったとしてもAIが誤りを学習することで精度は向上していきます。
セキュリティの都合上、銀行・金融サービスと連携することができなくても、CSV明細を出力し会計ソフトに取り込むことで自動で仕訳を作成することも可能です。
また、通帳や領収書などの紙ベースの書類については、スキャナー等で読み取りAI-OCRで解析することで自動で仕訳を作成することができます。
会計ソフトの入力が苦手な方にはExcelで出納帳を作成いただき、作成したデータを事務所側の会計ソフトに取り込むことで手間なく帳簿を作成することもできるようになりました。
記帳業務だけではありません。
税理業界の最大の繁忙期である個人の確定申告についても大きな改善効果を発揮しています。
医療費の領収書をAI-OCRで読み取ると、医療機関別、各人別に金額を自動で集計して確定申告書に記載してくれます。
領収書に医療費控除の対象とならない「予防接種」の記載があるとエラー表示まで出してくれる親切さです。
ふるさと納税の受領証明書については、日付、自治体、所在地、金額等を読み取り確定申告書に記載してくれます。
一度この便利さを覚えてしまうと医療費の領収書を何十枚と集計し、ふるさと納税の証明書をひたすら入力していた頃には戻れなくなってしまいます。(ちなみにJDLのAI-OCRを利用しました)
思った以上にAIの進化が早い
これまでAIの進化は税理士に代替するというよりは補完してくれる関係でした。
AIにより記帳や事務処理を効率化し、AIに代替されないコンサルティング業務に注力していこうというのが業界の主流となっています。
しかし、昨今の生成AIの進化を見るとコンサルティング業務についてもAIに代替される部分が出てくると感じています。
生成AIの急速な進化により生成AIを業務に取り入れている税理士事務所も出てきています。
私もチャットGPTでクライアントへの提案資料の素案を作成することがありますが、その精度は目を見張るものがあります。
私が1から作れば1時間はかかるであろう資料をわずか30秒ほどで作成してきます。
今後の進化と使い方によっては従業員1名分ぐらいの作業量を代替してくれるのではないかと感じています。
2024年7月にはクラウド会計を提供しているマネーフォワードがチャットGPTとの連携を発表しました。マネーフォワードに登録されている財務データとチャットGPTを組み合わせることで財務・経営状況のレポートを受けれるだけでなく、改善ポイントの提案まで受けることができます。
まさに私が生成AIを使ってこれからやろうとしていたことが会計ソフト側で提供できるようになりました。コンサルティングの効率化のために生成AIを利用していこうと考えていた矢先に、会計ソフト側で財務分析ができるようになったことに衝撃を受けました。
チャットGPTによる分析の精度がどの程度なのかについてはまだわかりません。
マネーフォワードもAIによる解説結果に誤りがある可能性を認めています。
しかし、今後その精度が向上していくことは間違いありません。
まとめ
AIが急速に進化しているとはいえ、すぐに税理士に代替するものではありません。
税理士の仕事は「数字」を相手にすることではありません。
「人」と関わることです。
クライアントからの相談は、財務分析や経営改善提案だけではありません。
融資の相談や人事・労務、将来の展望まで多岐に渡ります。
子育ての悩みを聞くこともあります。
これらがすべてAIに代替される未来はすぐには訪れないでしょう。
AIの進化に注視しつつ、業務化率化のパートナーとしてうまく付き合っていきたいものです。