インボイス制度 インボイスがもらえない取引6選

インボイスがもらえない取引6選 消費税

インボイス制度では仕入税額控除を適用するためには、原則としてインボイスの保存が必要となります。

しかし、すべての取引においてインボイスがもらえるとは限りません。
取引相手が免税事業者であるなどの理由によりインボイスがもらえないということもあります。

インボイスがもらえない可能性のある取引をご紹介します。

1.地代家賃

事務所の家賃や、月極めの駐車場代(土地の賃貸借を除く)は課税取引に該当し消費税がかかります。

インボイス制度前までは当然、仕入税額控除を適用することができました。

今後は、貸主(建物、駐車場のオーナー)が免税事業者であればインボイスの交付を受けることができず、仕入税額控除を適用することができません。

特に、事務所や店舗の近くに近隣の方(個人)が所有する駐車場を借りている場合は注意が必要です。

駐車場は1台当たりの賃料が数万円程度であるため、貸主がその場所にしか駐車場を所有していない場合は、免税事業者である可能性が高いです。

また、法人が社長の所有する不動産を事務所として借りている場合も要注意です。

社長が免税事業者である場合、社長にインボイス発行事業者への転換を求めることが難しく(インボイス発行事業者となると社長に消費税負担が発生)、インボイスを入手できないことがあります。

2.コインパーキングの利用料

1の地代家賃と同様に、コインパーキングでもインボイスが交付されないことがあります。

コインパーキングの所有者が免税事業者であればインボイスの交付を受けることができません。

三井のリパークなど大手が運営するコインパーキングでは、インボイスが交付されると思いますが、個人が運営するような場所では、インボイスが交付されないケースが散見されます。

コインパーキングの利用は、大半がインボイスのありなしではなく、目的地近くの空いている場所に停めるため、インボイスがもらえなかったということは生じてくるものと思われます。

3.健康診断費用

従業員の福利厚生として健康診断の費用を法人が負担することがあります。

健康診断費用は自費診療であるため、課税取引に該当します。

しかし、受診した医療機関が免税事業者であればインボイスの交付を受けることができません

医療機関の主な収入である社会保険診療は非課税取引に該当します。
そのため、健康診断や予防接種などの課税取引となる収入が少ない医療機関は、免税事業者となっているケースがあります。

大きな病院や健康診断を専門で行っている医療機関であればインボイスが交付されると思いますが、従業員がかかりつけのクリニックで健康診断を受けてきた場合などはインボイスが交付されないことが考えられます。

従業員が費用精算のために法人に提出する医療機関の領収書が、インボイスに該当しているかよく確認するようにしましょう。

※医療機関から受領したインボイスの宛名が従業員名であれば、インボイスに加えて、立替金精算書の保存が必要となりますので忘れず作成して保存しておきましょう。

4.諸会費

会費はこれまで消費税がかかっているかどうか判断が難しいケースが多くありました。

同業者団体の年会費、町内会費、クレジットの年会費、施設の年会費、懇親会費、研修会費、安全協力会費など会費といっても様々です。

これまでは、会費との対価性が明確なものについては課税取引、対価性がない又は不明確なものは不課税取引としてきましたが、インボイス制度では、請求書、領収書がインボイスであれば消費税が記載されるようになるため、課税か不課税かで判断に迷うことはなくなるでしょう。

そのため、これまで課税取引だと認識していた会費が実は不課税取引であったということが生じてきます。

また、会費を徴収する団体がインボイス発行事業者ではないため、インボイスが交付されないということもあります。

5.外注費・業務委託費

仕事を外注する場合、外注先が免税事業者であればインボイスの交付を受けることができません。

特にフリーランスとして働く方が多い、技術職の外注先については、免税事業者の方が多いようです。

インボイス制度が始まり、外注で仕事を受けている方の中には課税事業者を選択し、インボイス発行事業者となられた方も多く見受けられます。

仕事を外注する際には、外注先がインボイス発行事業者なのかそうでないのかを認識したうえで依頼するようにしましょう。

6.売手負担の振込手数料

買手が、請求額から振込手数料を差し引いた額を入金してきた場合、売手が銀行の振込手数料を負担することとなります。

この振込手数料について売手が仕入税額控除を適用するためには、買手から①「振込手数料相当額のインボイス」を交付してもらう、又は➁「買手が金融機関から受け取った振込手数料にかかるインボイス」+「買手作成の立替金精算書」を交付してもらうことが必要となります。

現実的には、数百円の振込手数料のためにインボイスを交付してくれる買手は少ないものと思われます。

そのため、実務上は、振込手数料を売上値引として処理することが推奨されます。

1万円未満の少額な値引については、返還インボイスの交付義務が免除されているため、新たな書類を交付することなく値引による消費税の控除を受けることができます。

具体的な処理はこちらの<売手負担の振込手数料の問題を解決>の記事に記載していますので参考にしてみてください。

まとめ

インボイスがもらえない可能性のある取引を6つご紹介しました。

仕入税額控除を適用し、消費税の税負担を抑えるためにはインボイスの入手が必要となります。

上記の取引について、自社ではインボイスを入手することができるのか検討してみましょう。

(参考)

インボイス制度 契約書のインボイス対応について はこちら

インボイス制度 税込1万円未満の取引についてインボイスの保存が不要となる少額特例はこちら

この記事を書いた人

広島市中区白島で税理士をしています。30代の開業税理士です。「税理士という枠を超えてお客様の一番の相談役となる」ことを目指しています。
税金や経営に関する情報、日々考えていることを発信していきます。

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