インボイス制度では、インボイスを発行しない免税事業者からの仕入れや経費の支払いについて仕入税額控除が制限されます。
具体的には、令和5年10月1日から令和8年9月30日までは仕入税額の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは仕入税額の50%が控除できますが、その後は全額が控除できなくなります。
そのため、「免税事業者から購入すると消費税の控除ができないのだから、免税事業者が消費税の請求を続けるのはおかしいのではないか?」というご質問をいただきます。
免税事業者は消費税の請求をしてはいけないのでしょうか?
免税事業者は消費税を請求できる
まず結論としては、免税事業者は、消費税を請求しても問題ありません。
免税事業者が消費税を請求してはいけないという税法上の記載はどこにもありません。
これはインボイス制度が始まっても変わりません。
インボイス類似書類に該当するのか?
免税事業者が消費税を請求するのは、インボイス類似書類に該当するのではないか?という指摘もあります。
これは、消費税法第57条の5の1により、インボイスと誤認される恐れのある表示をした書類を交付することを禁止しており、免税事業者が消費税を請求書に記載するのはインボイスと誤認する書類に該当するのではないか、という指摘です。
該当した場合、罰則として一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金がかかります。
(適格請求書類似書類等の交付の禁止)
第五十七条の五 適格請求書発行事業者以外の者は第一号に掲げる書類及び第三号に掲げる電磁的記録(第一号に掲げる書類の記載事項に係るものに限る。)を、適格請求書発行事業者は第二号に掲げる書類及び第三号に掲げる電磁的記録(第二号に掲げる書類の記載事項に係るものに限る。)を、それぞれ他の者に対して交付し、又は提供してはならない。
一 適格請求書発行事業者が作成した適格請求書又は適格簡易請求書であると誤認されるおそれのある表示をした書類
二 偽りの記載をした適格請求書又は適格簡易請求書
三 第一号に掲げる書類の記載事項又は前号に掲げる書類の記載事項に係る電磁的記録
引用 消費税法57条の5
結論としては、インボイス類似書類には該当しません。
実務上、請求書に消費税が記載されていたからといって、インボイスと判断するでしょうか?
インボイスと判断するのであればまずは登録番号の記載を確認するのではないでしょうか。
また、取引先がインボイスを発行しないからと言って、免税事業者に該当するとは限りません。
課税事業者であってもインボイスの登録を行っていない事業者はあります。
そのため、請求書に消費税が記載されており、かつ、登録番号の記載がない場合、請求書を受け取った側は取引先が免税事業者ではないかという予想はできますが、インボイスの登録をしていない課税事業者の可能性もあるため、確定することはできません(高い確率で免税事業者だと思われますが)。
課税事業者であれば当然、消費税を請求します。
よって、取引先が免税事業者か判断できない以上、免税事業者(と思われる)の請求書に消費税の記載があったとしてもインボイス類似書類には該当しません。
(追記:税務通信3715号 財務省担当官の方との座談会で、免税事業者が請求書に消費税額を記載するのはインボイス類似書類に当たらないと明確に回答されています。)
インボイス制度では消費税を請求しにくくなる
免税事業者は、消費税を請求しても問題ありません。
しかし、インボイス制度により、免税事業者から仕入れた取引先はインボイスをもらえないことで仕入税額控除を受けることができず、かつ、インボイスを発行しないことで消費税を納付していない免税事業者であることが判明した状況では、消費税を請求するのはこれまでよりハードルが高くなります。
取引先は、インボイスをもらえないことで自社の消費税負担が増えることになるため、消費税を納付しない免税事業者が消費税を請求してくることを快く思わないことが考えられます。
また、消費税を請求することに対して値引きの交渉もあるでしょう。
よって、免税事業者は、消費税を別途表示せず、消費税込みの金額での請求に変更するなど、取引先に消費税分を請求しているという印象を与えないような対応を検討することも必要になります。
インボイス制度 簡易インボイスを交付できる事業は? はこちら
インボイス制度 請求書がインボイスでない場合の源泉徴収税額の取扱い はこちら