インボイス制度 免税事業者のインボイス登録は必要?

免税事業者のインボイス登録 消費税

インボイス制度が令和5年10月から開始されます。

国税庁によれば令和5年4月時点ですでに課税事業者の9割方がインボイスの登録を済ませているそうです。また、消費税を納めていない免税事業者も約52万事業者が登録済みのようです。

私も課税事業者の方はインボイス登録をした場合のデメリットは少なく、むしろ登録しない場合のデメリットのほうが大きいため、原則的にはインボイス登録をお勧めしています。

では、現在消費税を納めていない免税事業者の方はどうでしょうか?

インボイス登録したほうがいいのでしょうか?

なぜインボイス登録が必要?

そもそもなぜインボイス登録が必要なのでしょうか?

それは、インボイス登録をしないとインボイスが発行できない=取引先の消費税負担が増えるためです。

消費税の計算方法を簡単に説明しますと

売上げにかかる消費税額-仕入や経費にかかる消費税額=納付する税額 となります。

この計算式にある仕入や経費にかかる消費税額仕入税額控除といいますが、令和5年10月からのインボイス制度開始後は、仕入税額控除を行うためにはインボイスの保存が必要となります。

そのため、インボイスを発行しない事業者からの仕入や経費にかかる消費税額は、納付する消費税の計算において控除することができず、その結果、消費税負担が増えることとなります。

免税事業者のインボイス登録のデメリット

消費税の負担が増えるなんて取引先に迷惑をかけるわけにはいかない。急いでインボイス登録をしてインボイスを発行しよう!となるところですが、インボイス登録にはデメリットもあります。

免税事業者の方は消費税の納税義務が免除されているため消費税を納付していませんが、インボイス登録を行うと消費税を納める必要が生じます

インボイスは課税事業者しか発行できません。

そのため、インボイス登録を行う=消費税の課税事業者になるということです。

仮に年間の売上にかかる消費税が80万円、仕入・経費にかかる消費税が50万円だった場合、差引30万円の消費税を納める必要が生じます。

また、消費税の申告書を作成する必要が生じるため、ご自身で申告書の作成が困難な場合、税理士へ申告書作成を依頼する報酬が発生します。

免税事業者のインボイス登録のメリット

では、免税事業者がインボイス登録を行うメリットはあるのでしょうか?

取引先との取引を継続できる

インボイス登録を行うことで取引先はインボイスをもらえないという不安がなくなりこれまで通りの 取引を継続してくれる可能性が高まります。
また、場合によっては、消費税負担が生じることによる価格交渉にも応じてくれるかもしれません。

インボイスを発行しない免税事業者との差別化になる

インボイス制度がはじまっても登録されない免税事業者はかなりの数います。
そうすると同じ内容の取引を行っている場合、インボイスを発行できない事業者よりもインボイスを発行してくれる事業者と取引をしたいと考える方は出てきます。
そのため、インボイスの発行を求める事業者との取引が増える可能性があります。

インボイスの登録要否の判断

免税事業者の方のインボイス登録の判断ポイントは次の通りです。

  1. 主な売上先が事業者か消費者か
  2. 登録しなかった場合の売上に与える影響
  3. 消費税の納税額

1.主な売上先が事業者か消費者か

売上先が消費者や免税事業者である場合、売上先は消費税を納付しないためインボイスを必要としません。
例えば、クリニックや学習塾など売上先のほとんどが消費者(または免税事業者)である場合は、免税事業者のままでも影響はさほど生じないでしょう。

一方で売上先が課税事業者の場合、消費税の仕入税額控除のためインボイス発行を求められる可能性が高くなります。

2.登録しなかった場合の売上に与える影響

インボイス登録を行わなかった場合に売上が減少する可能性があるか検討が必要です。

同業他社で代替可能なものであればインボイス登録を行わないことでインボイス登録を行った他社に売上が流れてしまう可能性があります。

「専門性があり自社しかできない」、「うちでしか扱っていないため商品であるため他社では代替できない」という強みがあればたとえインボイス登録を行わなくても売上が減少することはないでしょう。

3.消費税の納税額

インボイス登録を行い、消費税の課税事業者となった場合にいくらの消費税を納付することとなるか検討が必要です。
消費税の納付額が2で検討した売上の減少額よりも少額であればインボイス登録を行ったほうがよいということになります。

まとめ

免税事業者の方がインボイス登録を行うべきか否かは個々の置かれた状況により様々です。
そのため、個別に判断していくことが必要となります。

主な売上先が消費者、免税事業者の方、または他社では代替の効かない取引を行っている方はインボイス登録を行わなくても影響は少ないでしょう。

それ以外の免税事業者の方は、インボイス登録を行わなかった場合の売上に与える影響と登録を行った場合の消費税の納税額を比較してインボイス登録の要否を判断する必要があります。

(参考)インボイス制度 買い手が行うべき準備 はこちら

    インボイス制度 免税事業者は消費税の請求を続けることができるのか? はこちら

    インボイス制度 請求書がインボイスでない場合の源泉徴収税額の取扱い はこちら

この記事を書いた人

広島市中区白島で税理士をしています。30代の開業税理士です。「税理士という枠を超えてお客様の一番の相談役となる」ことを目指しています。
税金や経営に関する情報、日々考えていることを発信していきます。

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