インボイス制度 簡易インボイスを交付できる事業は?

インボイス制度 簡易インボイスを交付できる事業 消費税

インボイス発行事業者が、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う一定の事業を行う場合には、インボイスに代えて記載事項を簡易なものとした簡易インボイスを交付することができます。

簡易インボイスを交付することができる事業とは具体的にどのような事業が該当するのでしょうか?

簡易インボイスとは

簡易インボイスとは、通常のインボイスと比べて記載事項が簡易なものとされています。

通常のインボイスとの相違点は次の2点です。

①「相手方の氏名又は名称」の記載が不要

②「税率ごとに区分した消費税額等」又は「適用税率」のいずれか一方の記載でよい。

簡易インボイスの代表例はレシートです。
コンビニなどで商品を購入した場合、レシートが発行されます。
レシートを通常のインボイスに対応させようと思うと、レジで購入者の名前を聞いてレシートに記載しなければいけません。
不特定多数の者に販売を行っている中で、レシートに購入者の名前を記載するのは現実的ではないため、相手方の氏名又は名称の記載が省略されています。

簡易インボイスを交付できる事業

簡易インボイスはだれでも交付できるものではありません。交付できる事業が限定されています。

国税庁のQ&Aに交付できる事業の具体例が記載されています。

問 25 適格請求書に代えて、適格簡易請求書を交付できるのは、どのような場合ですか。

【答】

適格請求書発行事業者が、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う次の事業を行う場合には、適格請求書に代えて、適格請求書の記載事項を簡易なものとした適格簡易請求書を交付することができます(新消法 57 の4②、新消令 70 の 11)。
また、適格簡易請求書についても、その交付に代えて、その記載事項に係る電磁的記録を提供することができます(新消法57の4⑤)。


① 小売業
② 飲食店業
③ 写真業
④ 旅行業
⑤ タクシー業
⑥ 駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります。)
⑦ その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業

国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&Aより

①から⑤までの事業については、「不特定かつ多数の者に対するもの」との限定はないため、その形態を問わず、簡易インボイスを交付することができます。

そのため、不特定かつ多数の者に該当しない会員制のスーパーや飲食店であっても簡易インボイスを交付できます。

①から⑥以外の事業であっても、⑦の「不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業」に該当する場合は、簡易インボイスを交付することができます。

インボイスQ&Aでは次の例が示されています。

・ 資産の譲渡等を行う者が資産の譲渡等を行う際に相手方の氏名又は名称等を確認せず、取引条件等をあらかじめ提示して相手方を問わず広く資産の譲渡等を行うことが常態である事業


・ 事業の性質上、事業者がその取引において、氏名等を確認するものであったとしても、相手方を問わず広く一般を対象に資産の譲渡等を行っている事業(取引の相手方について資産の譲渡等を行うごとに特定することを必要とし、取引の相手方ごとに個別に行われる取引であることが常態である事業を除きます。)

体的には、旅館業(ホテル、旅館などの宿泊施設)や、洗濯・理容業(クリーニング店、理容室、美容室)、娯楽業(遊園地、劇場、映画館他)、レンタカー事業なども対象になると考えます。

また、高速道路の利用料金や公共交通機関の料金についても簡易インボイスが交付されます。

<追記>

国税庁の「多く寄せられるご質問」問14で、会員の中から広く参加者を募って行うセミナーは、簡易インボイスの交付を行う事業に該当することが示されました。

まとめ

簡易インボイスを交付できれば、「相手方の氏名等」、「税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率のいずれか」の記載事項を省略することができます。

これによりインボイス交付に伴う事務負担の軽減やシステム改修コストの削減が期待できます。

対象となる事業は、「不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業」と適用範囲が広いため、自社の事業が該当するか一度検討してみてはいかがでしょうか。

(参考) インボイス制度 自動販売機特例の適用範囲と要件 はこちら

     インボイス制度 旅費交通費の精算まとめ はこちら

     インボイス制度 契約書のインボイス対応について はこちら

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