令和5年10月よりいよいよインボイス制度が開始となりました。
すべての事業者に関係する大きな改正です。
しばらくは混乱必須
令和5年10月よりインボイス制度が開始となりました。程度の差こそあれすべての事業者に影響する近年まれにみる消費税の大改正です。
ここ数か月はインボイス制度についての基本的な内容から実務上の詳細な論点まで毎日のように質問をいただいております。制度が浸透するまで、数か月から1年程度は混乱が続くことになりそうです。
インボイス制度導入の経緯
インボイス制度という聞きなれない制度が急に開始されたように感じる方もいるかもしれませんが、インボイス制度の導入はずいぶん前から決まっていました。
インボイス制度の導入は、平成29年4月(その後延期となって令和元年10月)の消費税率10%への引き上げと軽減税率(8%)導入の際に決まりました。
軽減税率導入前までは単一税率であったため、売手も買手も消費税率を間違うことはありませんでしたが、軽減税率が導入されると消費税率は10%と軽減税率8%が混在し複雑になります。
売手は消費税率10%で売ったと思っているのに、買手は軽減税率8%で購入したと思っているというような、売手と買手の間で消費税率の認識誤りが生じるようになります。
課税の適正と透明性を確保するためにはこのままの制度ではいけないということで導入されたのがインボイス制度です。
インボイス制度では、インボイスと呼ばれる書類(領収書や請求書に一定の事項を追記したもの)を売手から買手に交付することになります。
インボイスには消費税の金額と税率が記載されているため、インボイスを確認すれば消費税について売手と買手との間で認識誤りが生じることはありません。
インボイスには、売手と買手の間で消費税の認識を一致させるという目的があるのです。
政府としては、本当は軽減税率導入と同時にインボイス制度も始めたかったのですが、軽減税率導入だけでも大きな負担と混乱が生じることが予想されたため、導入時期を4年遅らせて令和5年10月よりインボイス制度が開始となりました。
予想以上の影響
インボイス制度の導入について議論されていたころから、インボイスを発行できない免税事業者が取引から除外される恐れがあることや、事業者の事務負担が増加することが問題点として挙げられてきました。
免税事業者が取引から除外されるリスクについては、免税事業者からの仕入税額控除に6年間の経過措置(令和5年10月から令和8年9月までは免税事業者からの仕入について80%控除可能、令和8年10月から令和11年9月までは50%控除可能)を設けたことで多少の手当はされましたが、取引先からの要望もあり、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者となる事業者も多いようです。
また、事業者の事務負担の軽減については、
①小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)
②一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)
③少額な返還インボイスの交付義務免除
が設けられました。
①はインボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった方が対象であり、②は基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者が対象となっており、全ての事業者が対象となっているわけではありません。
また、適用を受けることができる期間は、①は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間、➁は令和5年10月1日から令和11年9月30日までと限定されています。
事業者が負う事務負担の増加に対して、これだけの事務負担の軽減措置ではとても十分とはいえません。実際に、事業者の多くは事務負担の増加に頭を悩ませています。
せめて、これまでの区分記載請求書等保存方式では認められていましたがインボイス制度では廃止となった、「税込み3万円未満の課税仕入れについては、請求書等の保存がなくても一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる旨の規定」を残してくれればよかったのですが、廃止されたものは仕方がありません。
自社でできる限り事務負担のかからないインボイス発行及びインボイス収集のオペレーションを検討していきましょう。
過去の記事を参考に
これまでインボイス制度について、質問が多い事項や実務で誤りやすい事例を中心に記事にしています。これからのインボイス制度への対応でお悩みのことがあれば参考にしていただけると幸いです。
(参考)
インボイス制度 銀行に支払う振込手数料のインボイス対応 はこちら